Interview - Mari AZUMAProject #3


良い妥協と悪い妥協があるんです

 
アンジェラ:様々な経験を重ねる中で、モデルとして求めるものや価値観は変わってきましたか?
 
我妻マリ:やっぱり妥協することも学ぶわね。例えば雑誌の仕事などはその写真の先にいる読者のことを考えなけ
ればならない。すなわち笑顔でなければならなかったり、自分がそこに馴染むことが優先順位の上位に入る。その
ニーズに合わせて仕事をすることがプロとしての自覚でもあるんです。ただし、これは一歩間違えるとネガティブ
なことでもある。妥協をするということは、本当の自分を押し殺してしまうことと同じですから。結果的に完成し
た作品を見て、どうしてこの写真なの?どうしてこのヘアスタイルにしたの?本当の私は違うのにって…。
 
アンジェラ:ストレスにもなりますよね。
 
我妻マリ:大切な事は、作品に携わる全ての人が、モデルのことを研究する努力もすることじゃないかしら?これ
はチームワークにも繋がる。
 
NAOKI:海外の場合はいかがですか?
 
我妻マリ:向こうの人たちと仕事をすると、どんなスタッフ(エディター、ヘアメイキャップアーティスト、スタ
イリスト‥)でもまずはモデルのことを研究しようと努めてくれますよね。中には、コミュニケーションをとるた
めに1時間以上モデルと話すフォトグラファーだっています。そして人間同士の心が馴染んだときに初めてフォト
セッションが行われる。これは、人間として当たり前の仕事の進め方ですよね。コミュニケーションがない現場は
とても寂しい気持ちになります。
 
アンジェラ:会話も無く、いきなり契約書を出されるような感じですね。
 
NAOKI:(笑)‥要するに、仕事として非常にマスプロダクション(注:大量生産、機械的)ですね。全然ひとり
ひとりと向き合えていないし、向き合う心がけがある人が少なくなってきているのも事実。
 
我妻マリ:傲慢ですよね。ひとりの人間としてモデルと対話した上で、初めて仕事があるべき。そこを妥協してほ
しくない。
 
アンジェラ:人間としての自分を求めてくれないと、モデルである意味が無い。表面的なことだけで良かったら、
内にある魂が無くてもいいのかなって思っちゃうし。たまたまその日に求められていた顔が私だっただけで、代わ
りはたくさんいるんだなって‥、すごく残念に思う。
 
NAOKI:悲しいよね。
 
アンジェラ:でも、中にはもちろん人間性を求めて下さる方もいらっしゃいますよ!
 

我妻マリ:そういう時はこちらのモチベーションも上がりますね。  

待つだけの苦しさ

我妻マリ:モデルってね、役者と同じで“待っている仕事”なんですよね。表現をする場所が無ければ何も始まらない。
 
アンジェラ:正直、待つことが辛くなることもあると。
 
我妻マリ:まさにその通りで、モデルだけで食べていく決心をすればするほど、待つ時間がどんどん苦しくなってしまう。
 
NAOKI:ずっと仕事をやり続けていきたいのに、現実的に表現する場所が無いということに悩んでいるモデルがた
くさんいるのも事実。僕も数百人というモデルと対話してきているけれど、彼女たちとコミュニケーションを取れ
ば取るほど、葛藤しているモデルが多いことに気付きます。
 
我妻マリ:仕事がしたいのに、表現したいのに、待つしかないという事実。そんな苦しいことは無い。
 
NAOKI:それを打開するものはありますか?
 
我妻マリ:ひとつに、プラスαの何かを持つことですね。
 
アンジェラ:モデル以外のベクトルで表現することはすごくいいことだと思います。仕事ではなくとも、例えば料理
というアプローチで表現をしたり、服作りというアプローチで表現したり。それがなければパンクしてしまいそうに
なる。
 
我妻マリ:モデルの仕事以外の自分も認めてあげること。そのバランスがなければ仕事もうまくいかない。だから時
代に沿って、モデル以外のことで収入を得ることも大切だと私は思うの。
 
アンジェラ:恋愛と似ていますよね。
 
NAOKI:心に余裕がなければ気持ちも通じない。
 
アンジェラ:(愛が)欲しい欲しい欲しい欲しい‥、と言っているだけだと相手にもウザがられてしまう(笑)うま
くいくものも絶対にうまくいかない!
 
我妻マリ:それに、気持ちにもお金にも余裕がなければ、写真に写る顔も厳しくなってしまう。モデルは夢を売る仕
事ですからね。誰が見てもふんわりと、優しく凛とした存在でいるべきなのですから。目がキツかったり、どこか余
裕がないと必ず見ている人にバレてしまうんです。まずは自分自身が輝き続けなければ何も始まらない。
 


モデルとして、ひとりの自分として輝く

 

NAOKI:モデル、人間としての輝きは何処から来るのでしょうか?

 
我妻マリ:例えば洋服がとても好きで、服作りやデザインをやりたいと思うのであれば、とにかくそれにチャレンジ
すること。前向きに新たな扉を開くことで自分自身も光り、その輝きは周りにも伝わる。すると、ある時期になると
またモデルとしての仕事がもらえるチャンスも必ず出て来ると思います。まず、自分という人間がしっかりしている
ことが大切ですよね。
 
NAOKI:やはり、ひとりの人間としてその人が生きる"軸"が大事であり、その一連の結果としてモデルは在るべきな
んだと。
 
我妻マリ:そこがわかっていないと、なんだかとても惨めな人生になってしまう。あっち行ったり、こっち行ったり
。不安で顔が曇ってしまったり。あと、やはり人間として生まれたからには、何でも一所懸命にやってみることです
ね。"できない"ではなく、やってみること。与えられた自分の命を使って、楽しく、面白く、やってみればいい!海
外で挑戦したい気持ちがあるのであれば、英語を学びながらチャレンジするべき。自分という"命を生かす"ことが大
切なのです。
 
アンジェラ:悲観的になってはいけないですね。
 
我妻マリ:前向きに挑戦することで、また新たな人と知り合うことが出来るし経験も増える。結果的にそれは、必ず
輝きとなって自分に返ってきます。
 
NAOKI:その輝きが、人間として、モデルとしてのオーラとなる!
 
我妻マリ:結局ダメにしているのは自分自身。"これが出来ない" とか "合わない" とか "わかってくれない" とか。文
句を言う人が多いけれど、それは全て自分の責任なんだと。
 
NAOKI:前向きに一歩を踏み出す勇気こそが、結果的に自分の糧となりますね。
 
我妻マリさんと実際にお会いして・・・
日々の生活を充実させながら、自分の生きる人生の目標に向かって歩み続ける我妻マリさん。その美しさの本質に触
れ、改めて自分らしく在ることの大切さに気付かされました。
 
NAOKI「僕は日頃からモデルもアーチストとしての生き方をして欲しいと言っているのですが、まさに我妻マリさん
は日々の生き方を通して、自分を真っ直ぐ見つめている姿に感動しました。 」
 
アンジェラ「私が初めて我妻さんとお会いしたのは16才の頃で一緒に撮影させて頂いたのですが、その時の我妻さん
から感じた芯の強さがとても印象に残っていて、ずっと気になっていました。今回は色々とお話を聞かせて頂いて、
その優しい強さがどういうものなのか、少し具体的に感じ取れた気がします。とても素敵で刺激的な再会でした。」
 
 
撮影協力 - 茶屋雨巻